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わなびすとりーむ!


作家志望の「高遠夕(Twitter: @syonenn)」と「ねぱ(Twitter: @nepapapa)」がお送りする、新感覚の創作系応援番組「わなびすとりーむ!」公式ブログです。Twitter:@wannabe_stream
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    「わなびすとりーむ!じゅっかいめ」放送ログ
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      「わなびすとりーむ!じゅっかいめ」放送ログはこちらです。

      その1 http://www.ustream.tv/recorded/20753338
      その2 http://www.ustream.tv/recorded/20756054


      2012年02月29日20:30より放送。今回は「『タンスの中にあった何かによって主人公が事件に巻き込まれる』物語のプロローグを書いて下さい」というお題に対してご投稿頂いた作品を元にトークしました。
      様々なアプローチ、タンスの場所や状況、そして何より何が入っているか。まさに十人十色と言った様態で、非常に興味深い放送となりました。

      次回放送は諸事情により未定ですが、またお会い出来る日を楽しみにしております。
      今回も御視聴いただきありがとうございました。
      |10:05| わなすと!放送ログ | comments(0) | trackbacks(0) | posted by わなびすとりーむ! - -
      お題「『タンスの中にあった何かによって主人公が事件に巻き込まれる物語』をのプロローグを書いて下さい」作品集について
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         2012年02月28日20時より放送予定のUSTREAM番組「わなびすとりーむ!じゅっかいめ」。この放送に向け、02月21日放送の「きゅうかいめ」にて、「『タンスの中にあった何かによって主人公が事件に巻き込まれる物語』のプロローグを書いて下さい」というお題を出させて頂きました。
         本ページでは、上記お題に対してご応募頂いた作品を掲載致しております。なお、著作権は全て作者の方にあり、本ページ管理人は一切の権利の主張を行わないものとします。

        作品リスト(応募順)

        「漣」 作者:柿原 凛さん
        「らーじえっぐす!」 作者:おじやしげきさん
        「passpoat」 作者:おじやしげきさん
        「white boad」 作者:おじやしげきさん
        「blank」 作者:和宮 樹さん
        「更正転機」 作者:海鳥 笛さん
        「地球最後の一人旅」 作者:fiiyuさん
        「彼女にバレル!?」 作者:Sitzさん
        「ヤオロズトビラ」 作者:長岡 壱月さん
        「クリスタルソウル」 作者:デン助さん
        「げいすぽ!」 作者:無才 乙三さん
        「baby cry」 作者:おじやしげきさん
        「もやし女の一生 」 作者:おじやしげきさん
        「ストレンヂ・ゲエム」 作者:指切 玄真さん
        「旧人Y」 作者:スナ惡さん
        「ロスタイム」 作者:マドルさん
        「アンネの日記」 作者:おじやしげきさん
        「life or money?」 作者:おじやしげきさん

        また応募要項は下記の通りです。
        続きを読む >>
        |17:45| わなびすとりーむ!じゅっかいめ 投稿作品集 | comments(2) | trackbacks(0) | posted by わなびすとりーむ! - -
        「life or money?」 作者:おじやしげきさん
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          金が欲しかった。
          この一言に全てが集約される。これ以上書くことはない。

          〜終わり〜

          で、終わってしまっては読者の皆様は面白くないだろう。800円もの超高級メモ帳を買ってしまったのと同じなのだから。自分なら絶対買いたくない。

          扉を開けた瞬間、愕然とした。
          足跡だらけのカーペット。乱雑に開かれた食器棚。そこからこぼれ落ちたと思われる、元食器の数々。机の引き出しの中身は全て巻き散らかされ、金庫も無理矢理こじ開けようとしたのか、ダイヤルをバールのような物で殴った跡がある。簡単に言うなら、空き巣に入られた、って奴だ。

          金庫は開かれていなかったし、そのほかの金銭的な物は持ち歩くことにしているため、金銭的な損害は一切無いようである。食器とかは買い直さないといけないだろうが、まぁそこまでダメージは大きくないだろう。

          念のため、金庫を開けて確認する。120円。うん、大丈夫。全財産入ってる。通帳なんて物もない。財布の中にも数百円しか入っていない。赤貧生活という奴だ。こんな貧乏ヤロウの部屋に空き巣に入るなんてバカだなぁ、と思う。食器など100円の紙皿で良いのだ。究極まで突き詰めると紙皿を洗って使えばよいのだ。うん。

          開け放たれたタンス。その中には同じがらのパンツが一杯入っている。しかし、その上に見覚えのない紙がある。防腐剤なんて高級品を置いた覚えはない。その紙に書かれたのは、ただひとつ。

          「強盗団、新入団員募集中!」
          |13:40| わなびすとりーむ!じゅっかいめ 投稿作品集 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by わなびすとりーむ! - -
          「アンネの日記」 作者:おじやしげきさん
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            気がついたのは、見ず知らずの部屋だった。明らかに自分の趣味ではない、ファンシーな、と言うような内装に、ポップなぬいぐるみ。そこがドコなのか、誰の部屋なのか、全てが思い出せない。昨日、バーで誰かと話をしたところまでは覚えているが、それ以降の記憶はいっこうに思い出せない。かといって、それ以外の記憶については全て残っているし、職業とかも全て覚えている。まぁ、無職なんだけど。

            持ち主のいないこの部屋は、なんだか不気味に思えてくる。持ち主のしれない、得体の知れないと言うものはこんなに不気味に見えてくるのであろうか。端から見たらただ彼女の部屋にきた彼氏のように見えるのかもしれないが。

            時計もないこの部屋は、周囲との時間の流れが違うのではないか、と思える。数時間経ったのか、それとも数分なのか。はたまた数十秒も経っていないのかもしれないし、数日経ったのかもしれない。ただ、窓もないこの部屋において、昼を作り出すのは頭上の蛍光灯のみであり、頭上の太陽は常に照り続けていた。

            「おはよう、元気かしら?」
            外界への扉が開かれ、一人の少女が現れる。見た目はちょうど18歳ぐらいだろうか。しかし、少女趣味があるのか、今流行のゴスロリという物なのか、フリフリのドレスを着ている。

            「おまえは誰だ? って顔してるわね。私はアンネ-フランポワーズ。今日はあなたにお願いがあるの」
            こちらが口を開く前に、まくし立ててくる。こちらが言葉を探している間、彼女の口は止まらない。

            「アンネグループ。あなたも、少しは知っているでしょう?」
            世界を牛耳るアンネグループ。「あなたの生活に、アンネ」と言うキャッチフレーズを掲げ、食品や電気機器、パソコン、さらにホワイトボードや軍事と行ったものまで取り扱う巨大企業である。また、表舞台には出ないが、内臓や奴隷と行った、違法性のある物までも取り扱っていると言う。まさに、アンネグループが取り扱わない物は無い、と言われているのは事実なのだろう。

            「あなたには、アンネグループの代表を殺して欲しいの」

            ファンシーな部屋にあるファンシーなタンスの中。二重底になっているそのタンスの中に入っている黒光りする殺人道具を手に取って。

            「世界を代表する暗殺者である、あなたにね」
            |13:30| わなびすとりーむ!じゅっかいめ 投稿作品集 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by わなびすとりーむ! - -
            「ロスタイム」 作者:マドルさん
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               冬が過ぎ、春の兆しが辺りにちらほらと窺えるほどには暖かくなった頃、私は転勤のために荷造りを始めていた。心理臨床士である私は定着した勤務先は無く、必要とされれば向かうような人間だった。新しい出会いを求めているわけではないが、一つの場所にずっと居続けるというのは少し閉じ込められた気がして嫌なのだ。今年で34という、働き盛りという事もあって、努力の意欲はまだまだ二十代の頃と変わりないと自分では思っている。
               患者の方も回復し、私でなくても大丈夫なほどなになってきたので引き継ぎに任せておけばいい。勝手な言い草ではあるが、前の勤務先の臨床士達はかなり腕がよく、頭もきれ、私以上の治療が出来ると確信しているからこそ、引き継いでもらうのだ。
               人の心はとても神秘的だ。心はどうやって生み出されるのか、という問いは昔から議論されているテーマである。その解明は未だになされていないが、それでも多くの事は分かり始めている。その結果、心理臨床士などの心の医療というものも生まれ始めている。
               私がその道を志したのは、二十年前の事だ。私も心、硬く言えば精神状態が芳しくなかった。解離性同一性障害、いわゆる多重人格という症状を呈していた。
               その頃の私の記憶は少しばかり曖昧だ。というのも、その頃の主な人格はこの私ではなく、もう一人の私だった。私には記憶のない事が色々と起こったりしていて混乱したりもしたが、それでも至って落ちついていられたのは彼の事を知っていたからである。どうしてそんな事が出来るのか、と訊かれれば現実的で論理的な回答は出来ないが、簡単に言えば二つの意識が混ざり合う時に私と彼はコンタクトを取る事が出来たと言える。その瞬間というのは、私の体が、脳が、活動を休止する就寝の時だ。
               懐かしさで胸が一杯になる。あの時、私に不安は無かった。今となってはそれは少しばかり恐ろしい事なのだけれど、彼との時間はとても楽しいものだった。その日の出来事を少し大げさに表現しながら、彼はまるで何も知らない子供に教えるようにして話す。その姿が今でも私の中に鮮明に残っているのだ。
               さて、そうして考えているうちに大抵の物は片付け終わった。次は服に取り掛かるとする。衣服の入ったタンスの中には、今となってはもはや気ないだろう服がいくつか残っている。それは、私の怠慢で残っているわけではなく、ちゃんとした理由がある。その服は、厳密には私の服ではないのだ。何のデザインも施されていない、無地の色んなカラーの服がそこにはあった。
               それを着た、自分の姿をおぼろげではあるが覚えている。その歳には多い、自分に合ったサイズではなく少し大きめの服だったはずだ。ダボダボ感があの頃では当然のようにして流行っていた。それに、彼も倣ったのだろう。彼も流行に敏感だったのかと思うと、少しおかしかった。
               懐かしさで胸一杯になりながら、服を片付け始めてた。何着か片付けているところで、服の間から紙きれが出てきたので私は驚いてしまった。
               黄ばんでいるところから見ると、少し古いものなのだろう。名前も書いていないが、この場所から出てきたことから誰からの物かは察しがつく。
               二つ折りにしてあったそれを暫く、私は開く事が出来なかった。というのも、嬉しい気持ちの反面、不安というものもあるからだ。私の中では彼の事を理解しているつもりだったが、彼からしてみれば、私は何にも理解していなかったかもしれない。それが、怖いのだ。
               けれど、ここで迷っていても仕方がない。それに、彼は『もういない』。彼は私の中から消えていった。何も言わずに。ここには、その理由が書かれているかもしれない。
               私は決心し、薄っぺらい紙を開いた。そこには、こう書かれていた。

               君がこれをみるのはいつの事だろう。僕が消えてからすぐだろうか。それとも月日が経ってからだろうか。出来れば、前者であってほしいと願ってやまない。
               さて、僕が君から消える理由について簡単に説明させてもらう。
               一つ目。僕は事件に巻き込まれた。その内容を話す事は出来ない。僕は、監視されている。僕が事件に関する内容を少しでも零せば、君の親しい人の誰かが不幸に遭う。それを避けるため。
               二つ目。人格としての期限が迫っているため。僕は君の中の、感情の中の一つの機能の役割を人格化したものだ。しかし、僕と関わる事で君はある一つの感情を取り戻しつつあるため、期限を待たずとも消えようと考えたため。
               三つめ。僕を忘れてもらうため。君が僕を忘れてくれたならどれだけ良いだろう。僕によって刻まれた記憶が表面化せず、他の記憶にかき消され、僕という記憶もその海の底に埋もれてしまおうと思ったため。
               これを読んだ後、すぐにゴミ箱に放り投げてほしい。決して、僕の事を公言しない事。僕が巻き込まれた事件について調べない事。僕について考えない事。僕の事は忘れる事。手紙の事は忘れる事。
              僕は誰でもありません。僕はどこにもいません。僕はもういません。さようなら。

              親愛なる君へ
              |13:25| わなびすとりーむ!じゅっかいめ 投稿作品集 | comments(4) | trackbacks(0) | posted by わなびすとりーむ! - -
              「旧人Y」 作者:スナ惡さん
              0
                 私がその失礼な後輩に出会ったのは4月という想像に難くない時節だった。出会いというものの大半は4月だ。

                「先輩、ゴリラに似てるって言われないですか?先輩、ゴリラに似てるって言われるっすよね?」
                「・・・まあ」

                こういった質問を受けるのは今に始まったことではなく、これまでもたびたび行われてきた事だったが、決まって相手は無礼な人間と決まっていた。

                「やっぱりそうですよね!?他でも言われますよね!?」

                そういって後輩の出来田(できた)は嬉しそうに歩き去っていった。不可解かつ不快だ。私、東原(とうはら)は出来田と同じ実験棟へ歩いていたのだが、不躾な質問で呼び止められ立ち止まっていた。そのまま歩き始めると彼(か)の不躾な出来田を追う形になってしまう。なにか癪に障るので無駄に着ている白衣の襟を正した。

                「東原君おはよう。」

                研究助手の平井さんだ。

                「おはようございます。」

                私は近い将来、平井女史の好意を得るべく勤めてさわやかに挨拶すると、不躾な出来田のことを忘れて、、平井さんと歩調をあわせて実験棟へ入っていった。

                「なんで通路の真ん中で立ち止まってたの?」

                白衣を正していたところを見られていたようだが、週末を控えた金曜日に平井さんとスムーズな話題があるのは好ましいことだ。何か取り繕った会話を使用かとも思ったが、あった事をそのまま話した。

                「研究室の先輩捕まえてゴリラ呼ばわりしたの?出来田君らしいよね。」

                平井先輩の目が笑っている。

                「まあ、自分でもちょいちょい自覚はしてるんですけどね。へへ・・・」
                「まあ、東原君は人類の中でも、だいぶゴリラよりかもね。」

                笑い半分に自虐ネタ・・・と思ったら「ゴリラより」と言った平井先輩は真顔だった。

                「へへ・・・」

                愛想笑いをしてしまった手前、温度差をどうすることも出来ない。

                「ゼミ遅れそうだから、走ってもいい?」
                「あ、はい。」

                ・・・なるほど、そういうことか・・・と廊下を走りながら合点した。しかし、そういうことでは無いと知るのはもう少し後だった。


                 私こと東原勇気は大学4年生。人文学部で歴史を学んでいる。しかし、これは私の人生の中でも1・2を争う失敗だと最近では考えるようになっていた。大学のミスコンで優勝した経歴を持つ平井先輩の色香に惑わされて人文学部に進んだはいいが、まったく興味が無い学問で(ちなみに学問全般に興味は無い)、卒業論文は自分でも何かいているのかさっぱり分かっていないし、決まった就職先は食品会社だし、もう少し色々考えて決めるべきだったが、考え始めると頭の中は容姿端麗で大人の色香漂う、才色兼備の平井先輩のことだった。

                (・・・こんな女性と・・・けk・・・結婚できたら・・・)

                「・・・センパイ・・・よだれ」

                出来田に小声で囁かれ、ハッと気付く。

                「居眠りっスか?」

                まさか、午前中から妄想が暴走していたなどとは言えず、出来田が唱えた「居眠り説」に同調した。

                「昨日、あんまり寝てねえんだ。」

                出来田は無言でミントタブレットとティッシュを差し出す。私はよだれを始末し、音がしないようミントを噛んだ。もしかすると本当に居眠りしていたかもしれない。ミントの刺激に頭が急激に冴える。妄想の対象の平井先輩はその様子を見ていたらしく、くすりと笑っている。見られていた。別に私も最初から彼(か)の女性を好ましく思っていたわけではない。なぜか妙に見られているのだ。最初は自意識過剰なのかと思ったが、そうでもないと確信したのはつい最近。他の女性は当然講義に集中しているような時でもやたら目が合う。

                (俺がゴリラだからか?)

                小ー中ー高と必ずつけられるあだ名はゴリラの私。それで今まで得をしてきたことは無いが、ここに来てようやくゴリラ顔が功を奏したのかもしれない。平井先輩はゴリラ顔が好きなのかもしれない!そうだったとしたら・・・

                (もっと早く平井先輩にアタックしておけば・・・俺の大学4年間はあんなことや、こんなことが・・・)

                「先輩、よだれ」

                本日、二回目の出来田の囁きだった。


                「はぁ・・・」

                ため息をつきながら大学の中庭を歩く。朝イチ、二回目のよだれはゼミの生徒全員に見つかり、教授には注意され、平井女史には爆笑された。それ以後、今日は何をやってもうまくいかず、予定していた講義を全て出席し終える頃には心がクタクタだった。

                「はぁ・・・」

                ため息しか出ない。

                「東原くーん」
                「はぁ・・・」
                「東原くん」
                「はぁ・・・」
                「トウハラユウキ!」
                「はぁ・・・い!って先輩!!」

                平井先輩がすぐ目の前まで迫っていた。

                「どっ・・・どうしたんですか!?」
                「今晩ヒマ?」

                ヒマではない。

                「ヒマです。」

                平井先輩の顔がほころんだ。

                「研究室の資料の整理手伝って。」
                「はい!」

                バイトは急病で休むことにして、人文学部棟へ引き返す。

                「あー、よかった。東原くんが帰っちゃったらどうしようかと思った。」
                「いやー、えへへw」

                なにが「えへへw」だ・・・と自分でも思うが、えへへなものはえへへだ。いそいそと平井先輩についていくと、今朝、2回もよだれを垂らした研究室に着いた。

                「先に休憩しようよ。」

                平井先輩はマグカップを棚から出すと準備室の沸騰ポットに向かった。隣室に入っていく後姿もきれいだ。

                「あと、そうそう。この前、居酒屋で飲み会やったとき靴下穴開いてたでしょ?」

                隣室でコーヒーを入れながら声をかけられる。

                「あ・・・いや・・・その・・・」

                そんなところまで見ていたのかとどぎまぎする。顔が赤くなるのが分かる。狙ってその顔を見に来たのだろうか、悪いタイミングで先輩はこちらへ戻ってきた。

                「すんません、朝にはいた段階では穴空いてなかったんですよ。」
                「・・・ああ、責めたわけじゃなくて・・・これ持ってて。」

                先輩は持ってきたコーヒーを二つとも私に渡すと、自分のかばんを探った。

                「似合うと思って買ってきたの。」

                新品の靴下だった。信じられない。平井先輩が私のために靴下を買ってきた。

                「履いてみてよ。」

                先輩は固まっている私の手から自分の分のコーヒーを取り返すと、そのコーヒーに口をつけながらそういった。

                「は、はい!」

                私は実は足の親指が不恰好なのがコンプレックスで余り人前で靴下を脱がないのだが、そんな気持ちは全部ぶっ飛んで、大急ぎで履き替える。

                「やっぱり似合うね。・・・あ、ゴメン。コーヒー冷めちゃう。」
                「い!いや、全然!!まだあったかいです!!」

                急いでコーヒーをすする。熱いがもはやそんなことは気にならないほど私は舞い上がっていた。顔が上気しているのだろうか。女性からのあからさまな好意に慣れていないのだろうか。それとも、平井先輩の単なる好意に出すぎた勘違いをしているのだろうか。だんだん意識が混濁してきた。

                「大丈夫?調子悪そう。」
                「・・・そんなこと無いです・・・全然。」

                平井先輩は微笑むと立ち上がった。

                「私ね・・・以前、チームで古人類学を研究してたの。」
                「はあ。」

                先輩の白衣姿が見えている。

                「そこですごい発見しちゃったわけ。それはね、先史時代から有史までアフリカには違う種類の人類がいたの。アルディピテクスっていう名前で化石も発見されてる。・・・知ってる?」
                「いや知らないです・・・」

                寝不足に難しい話で眠くなってきた。

                「皆は原始時代の野蛮人だと思ってるみたいだけど、調べてみたら全然違った。現在の化学文明とは異なる高度な文明を持った民だった。元々、非常に好戦的な種族だった彼らは大きな戦いの後、絶滅寸前まで数を減らして、闘争を捨てたのよ。そして、その後生まれた新人類・・・今の我々にその文明を伝えたって・・・いくつかのシャーマンの口伝から私はそう結論付けた。そして、なぜ彼らが消えたのかも調べた。」

                私は目を開けているのが精一杯だった。平井先輩は変わらず話を続けている。

                「新人類は恐れた。彼ら旧人類を恐れて、彼ら旧人類から教えて貰った技術によって、旧人類を滅ぼした。その技術とは・・・遺伝子組み換えだったんじゃないかと思う。」
                「・・・遺伝子組み換え・・・先史時代に・・・」

                平井先輩は満足そうだ。

                「旧人類は英知にあふれた民ではなく、単なる霊長類に格下げされた・・・でも、旧人類の血脈が完全に絶たれたわけじゃなかった。新人類のたくらみに気付いた旧人類は、同じ遺伝子組み換えの技術を使って絶滅を免れた。人類に隠れて上手く生き延びたのよ。」
                「・・・」

                相槌を打とうにも口が開かない。声が出ない。異変に気付いた。

                「チームは必死でその新人類に隠れた旧人類の染色体を探した・・・そして、中国にその末裔がいたことを突き止めた。そこから、その子孫をたどって辿り着いたのが、山梨県の県境にある旧い民家。そこのタンスに隠れていたのがこれよ。」

                先輩は私が返答しないのを見て満足そうにしている。そう、私は一服盛られたのだ。

                「そこの民家ね・・・実は、東原君の本当のご実家なのよ。知らなかったでしょ?お父様からも教えていただいてないはずだものねえ。しかも、その遺伝子、全員に遺伝するわけでもないのよ・・・ご兄弟ご家族いるけど、遺伝するのはご長男だけ。東原くん・・・おめでとう。あなたがその旧人類。アルディピテクス=インテリゲンシアの末裔。我々人類の共通の敵よ。・・・永遠におやすみなさい。」

                「ああ、なるほど、そういうことか。」と妙に納得して私は深い眠りについた。目覚めることはもう無いのだろうと・・・その時はそう思っていたかもしれない。
                |13:20| わなびすとりーむ!じゅっかいめ 投稿作品集 | comments(2) | trackbacks(0) | posted by わなびすとりーむ! - -
                「ストレンヂ・ゲエム」 作者:指切 玄真さん
                0
                   pipipipi――pipipipi――

                   くぐもったアラーム音が悪夢の始まりだった。
                   俺は半ば条件反射で腕を伸ばした。枕元の時計を掴み、アラーム停止のスイッチを押す。

                   pipipipi――pipipipi――

                   けれども、音は止まらなかった。
                  「……あ?」
                   おかしい。たしかにスイッチは切ったはずなのに。ということは、なにか別のものが鳴っていることになる。
                   二度寝するにも音が気になるので、仕方がなくベッドを這い出た。覚醒しきらない頭を無理矢理働かせる。

                   pipipipi――pipipipi――

                   音源はどうやらタンスの中にあるようだ。そちらに足を向けたところで、奇妙な感覚が俺を襲った。
                   俺はトランクスしか身につけていなかったのだ。いや、下着だけで寝る人も世の中にはいるだろう。肌の健康だとか、窮屈なのがいやだとか、その他諸々の理由で。大いに結構。だが、今は俺にそういった習慣があったかどうかが問題なわけで。

                   pipipipi――pipipipi――

                   なんにせよ、まずはアラームだ。俺はタンスの前まで来ると、特に考えもなく一番大きなクローゼット部分に手を掛けた。
                   中に入っていたのは、セーラー服――を着た少女だった。
                   ……悪い。いいわけをさせてくれ。気が動転していたんだ。正確に言おう。
                   クローゼットの中に入っていたのは、セーラー服を着た少女だったモノ、だった。
                   なぜ過去形なのか。察しのいい人ならわかっただろうが、一応ちゃんと説明しよう。死んでいたからだ。
                   じゃあなんで死んでいるとわかったのか。それは簡単だ。
                   両目が腐り落ちていたからだ。

                   pipipipi――pipipipi――

                   アラーム音で俺は我に返った。と同時に、凄まじい悪臭が鼻を突いた。生臭く、ねっとりとした刺激臭。俗に言う死臭というやつか。嗅ぐのは初めてだが、おそらくこれのことだろう。
                   そう、死臭。死体だ。少女の死体。腐乱死体。俺の目の前に。
                   双眸に穿たれた空虚が俺のことを見つめ返していた。
                  「……――うぉ、ぇ」
                   嘔吐感が一気に来た。それでも吐くには至らない。よろめいて後ずさるのが精一杯。現実離れした光景を前に、胃のむかつきだけが妙にリアルだ。
                   なにが……なにが起こっている?

                   pipipipi――pipipipi――

                   アラームは鳴り続けている。少女だったモノの方から。握られたPHSが頭上のランプを点滅させていた。
                   ……取るのか? あれを?
                   グロテスクなその光景を想像して、酸っぱい液体が喉をせり上がる。今度は吐いた。床に向かって盛大に吐いたつもりだったが、出てきたのは胃液だけ。息が苦しい。鼻水が出た。涙も出た。

                   pipipipi――pipipipi――

                   アラームは止まない。まるで「取れ」と催促しているかのようだ。事実、誰かに取られるためにPHSは鳴き声を上げているのだろう。
                   その誰かはもう死んでいる。だから、俺しかいない。
                   口を拭い、息を止めた。意を決して大股で近づく。死体の手からPHSを抜き取る。指の肉が剥がれ落ちた気がしたが、見なかったことにした。
                   飛び跳ねるようにしてベッドの陰まで逃げた。なにから逃げたんだと問われれば、答えに困る。死体が動くわけでもあるまいし。強いて言うなら、状況から逃げた。そんな感じだ。

                   pipipipi――pipipipi――

                   PHSのディスプレイを見る。「非通知」の三文字が行儀良く並んでいた。紛らわしいことに、アラームではなく着信音だったらしい。
                   つまみ上げた格好のまま、通話ボタンを押す。とてもじゃないが耳に当てる気にはなれなかった。それでも相手の声は鮮明に聞こえた。
                   異常なほど、鮮明に。

                  『タノシイ ゲエムノ ハジマリ ハジマリ』

                   無機質な合成音声。人間味のないそれは実に不気味だった。
                   いや、それよりも――
                  「……ゲーム?」
                   聞き返した時には、すでに通話は切れていた。全くもって意味不明。なにもかもが意味不明だ。
                   しかし、頭の中を整理するよりも先に状況は動き出していた。
                   バタン、と車のドアの閉じられる音が聞こえた。窓の外を見ると、アパートのすぐ下に停まっていたのはパトカー。二人の警官がなにかしら話している。
                   そろそろ俺の脳味噌が限界だった。どうすればいいのかまるで見当がつかない。そのまま思考停止していたら、警官の一人と目があった。
                   ヤバい……のかもしれない。直感がそう告げていた。
                   間もなくこの部屋にあの二人の警官が来るだろう。そしたら俺は、この状況をどうやって説明すればいいんだろうか。
                   だって、俺はこのPHSの相手にも、少女の腐乱死体にも心当たりがない。
                   とりあえず服くらい着た方がいいのだろう。けれどもそれすら叶わない。
                   だって、どこに服があるのかすら心当たりがない。
                   そうなのだ。
                   俺が下着で寝る習慣があったかどうか……そんなもの、わかるわけがないのだ。

                   だって、俺には記憶がないのだから。
                  |13:15| わなびすとりーむ!じゅっかいめ 投稿作品集 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by わなびすとりーむ! - -
                  「もやし女の一生 」 作者:おじやしげきさん
                  0
                    もやし。
                    主に穀類、豆類の種子を人為的に発芽させた新芽である。

                    豆類のモヤシを特に豆もやし(ビーンズスプラウト、ビーンスプラウト、Bean sprout)という。豆もやしは、豆自体または、発芽した芽と茎を食用とする。(wikipediaより引用)

                    一般的には緑まめを使った物が良く食べられており、安い。ひげねを切るとしゃきしゃき感が増しておいしい。
                    で。
                    「何でそれが私のタンスの中にあるのよぉ!」
                    タンス一面に広がる真っ白な新芽。今までそこにあったであろう洋服や下着、ブラなどはどこに行ってしまった、存在が消えて無くなってしまっている。いくらお買い得食品で有名なもやしといえども、タンス一面に敷き詰めるとなると相当額になるんじゃないの? しかもひげねが全部切ってあるのが憎い。くえって事かしら。

                    「……当分もやし料理かなぁ」
                    こういう予定変更が直ぐに出来るのも独り身のメリットの一つだ。30年も生きていると物事をポジティブに見ることがすごく得意になる。それと同時に魅力はどんどん下がっていくんだろうけど。
                    「確かごま油が…… って無いかー」
                    独り言にもなれた。と言うか、言わないとやってられない。寂しいとは思わないけど、喋らないと本当に日本語を忘れる物なんだな、ってこの前コンビニに行ったとき実感した。職業柄喋ることも少ないし、合コンとかクラブとか、そういうところに行くこともない。ただ、自分だけの世界に入って行けたらいい。自分だけの世界へ、行きたい。自分の理想の世界へ。

                    「ま、そんなこと言っててもしょうがないけどねー」
                    また、独り言である。しょうがない、ごま油買ってくるか。
                    私はドアノブを掴み、一歩外へ踏み出した。
                    |13:05| わなびすとりーむ!じゅっかいめ 投稿作品集 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by わなびすとりーむ! - -
                    「baby cry」 作者:おじやしげきさん
                    0
                      すぴー。
                      タンスのくぼみに手をかけ、引っ張るまでの時間、30秒。
                      すぴー。
                      引っ張って、その中をのぞき込む時間、10秒。
                      すぴー。
                      その中に、ある物を確認する時間、20秒。
                      すぴー。
                      「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁあ!」
                      と叫ぶ時間、3分。

                      ベッドに眠っているのは生後半年ぐらいの幼女。ちなみに小さい方だけ出してたけど、オムツを汚すだけですんでいた。やるなサイドギャザー。あの青色の液体をこぼさないだけある。

                      唐突に宣言するが、自分はロリコンではない。断じてロリコンではない。今ベッドの上で寝ている幼女のオムツを替えたとき、まじまじと局部をのぞき込んでしまったけれども、それは性別を確認するためであって、断じてロリコンなどではない。なに? ロリコンだと? そんな汚物は消毒してしまえ! ロリコンなど社会のゴミなのだ! 俺は、ロリコンではないのだ! 蒸れていた幼女の股間を拭いてあげたときに、つい直に手でその割れ目をすりすりしてしまったが、それは窓の桟に指を入れて擦りたいと思うのと同じだから、ロリコンと言われる筋合いは無い。しかし、ロリコンなんてどうやったらなれるのだろうか。あんな、汚らわしい、醜いものなど存在しないというのに。まさにこの世に存在することが間違っている。ロリコンの血など全て撲滅させてしまえばよいのだ。自分が、気がついたらオムツを外した幼女のアソコに顔を埋めていたのは、最近自分が使っていた低反発枕がちょっと古くなって、新しい枕を探していたからであって、決して幼女に性的な興奮を覚えたからではない。断じてない。あんな物になってたまるか。ニート、ヲタクと並んでキモイ悪い物三景に入る、ロリコンになど。あんな物になるなら死んだ方がましだ。今、怒張しているアレは断じて性的に興奮しているからではない。怒っていることによって血液がなぜか下半身にたまってしまったからだ。今、その怒張した局部をむき出しになっている幼女の女○器に突き立てようとしているのはそこに穴があるからであっ「キモイ早く降りてこい屑ロリコン!」

                      ……
                      だぁだぁ。
                      「〜〜タンスを開けたら〜〜」
                      だぁだぁだぁ。
                      「あの子が〜〜〜」
                      だぁだぁだぁだぁ。
                      「〜〜が濡れてたから交換しようと〜〜」
                      だぁだぁだぁだぁだぁ。
                      「そして気がついたら下半身を〜〜だ、と」

                      俺が小さいときに使っていた幼児用椅子を引っ張ってきて、お誕生日席に鎮座されている幼女は、その横で土下座、ペドフィリアの汚名を着せられそうになって状況説明をしている俺の事など気にせずに、だぁだぁ言っている。泣く、とかぐずる、と言う事はなく、その場にいることが当然であるようにだぁだぁ言っている。だぁだぁ。

                      「……状況は、分かった」
                      「わ、分かってくれましたか母上!」
                      「コラ抱きついてくるなクソロリコンのクソマザコン!」
                      母のおみ足が顔に食い込む。その足のかける力と自分の進撃がちょうど釣り合って均衡が保たれる。
                      「で、どうすんだコイツ?」
                      「ふぁ?」
                      素っ頓狂な声をあげる。気持ちよくなってきた。
                      「警察に持って行くのか、保健所に行くか。それとも、何か危ないところと繋がってたらこっちに何が起こるか分からないし。そもそも、コイツが何者なのかも分からないって言うのはどうしようも無いだろう」
                      だぁだぁ。
                      二人の視線を感じているのかいないのか、幼女はテーブルクロスをしゃぶっていた。
                      |13:00| わなびすとりーむ!じゅっかいめ 投稿作品集 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by わなびすとりーむ! - -
                      「げいすぽ!」 作者:無才 乙三さん
                      0
                         もう十月だというのに日照り続きで、近所のセミは「ジー、ジリジリジー……」と喧しく鳴き、暑さを倍増させていた。
                         親父の葬儀が終わり、居間で母親と遺品整理をしていた。書斎の方がまだ手付かずだというので、母親に言われるがまま、俺は親父の書斎の前に来ていた。
                         生前、厳格で典型的な亭主関白、おまけに秘密主義だった親父の書斎には、他人はおろか、俺たち家族すらも入ることは許されなかった。その書斎に入れるという冒険心からだろうか、不謹慎ながらも俺は少し心が弾んでいた。
                        「おじゃましまーす」そう挨拶をしてから部屋の中に入る。
                         家には居間に母親、そして俺だけ。当然、誰かが居るはずもない。部屋に入る際の通過儀礼というやつだ。
                        「え、これだけか?」
                         期待に胸を膨らませていただけに、あからさまに落胆してしまう。
                         広々とした和室には、親父が使っていた書道机と掛け軸、そして古びたタンスが一つだけ。
                         引き出しが三つしかない木製のタンスを見上げながら子供の頃を思い出す。わんぱく小僧だった俺は、親父の書斎へ忍び込み、なにかイタズラをしようと試みた。しかしこのタンスを開けようとしたところで、仕事から帰宅した親父に見つかり、鬼の形相で拳骨で数回頭を殴られたことがあったっけ。
                        「あの時の拳骨、痛かったなぁ」
                         親父は何をあんなに隠したがっていたのか。今となっては、親父に聞くことさえ叶わない。
                         タンスに手を伸ばし、上から順に明けていく。一段目は、空。二段目は書道の本やら賞状やらが無造作に詰め込まれていた。そして三段目。一段目と二段目の時のように、軽く引いてみるが、ビクともしない。古くなって壊れてしまったのだろうか、まるで鍵が掛かっているかのように重い。
                         今度は踏ん張り、力強く手前に引き出す。すると「ガタッ」という音と共に引き出しが開いた。その拍子に後ろに倒れ、尻を地面に打ちつけた。
                        「あいたたた」
                         腰を押さえながら、タンスを覗き込んだ俺は、金縛りのように体が硬直した。
                         タンスの中には、見たこともない筋肉質の男が全裸で、横に丸くなってうずくまっていたのだ。
                        「うわあっ!」
                         あまりに非現実的な状況に俺は思わず声を上げ、また尻餅をついた。しかし、その声にすら男は無反応で、少しも身体を動かさない。死んでいるのだろうか。恐る恐る男に近づき、手を伸ばすと、突然、腕を掴まれた。驚いて男の顔を見ると、大きく見開かれたその目の瞳は俺を睨んでいた。
                         恐怖と痛みで俺はパニックに陥った。
                        「は、離せっ、離せぇっ!」
                         掴まれた腕を振りほどこうと、振り回す。しかし男の手は、強まるばかりで離す気配はない。
                        「か、母さん! たっ、助け――」
                         助けを呼ぼうと精一杯の声で叫ぼうとした瞬間、俺は引き出しの中に引きずりこまれた。
                         空想科学小説じゃあるまいし、タンスの中に引きずりこまれるという表現は滑稽だ。しかし文字通り、俺はタンスの中に引きずり込まれたのだ。なんて冷静に考える暇などなく、まるで深海に放り込まれたように息がつまる感覚がしばらく続いた後、俺は意識が飛んだ。

                        「生きてる、のか?」
                         目を覚ました俺は、生きている事に、ほっと安堵の溜息を吐いた。しかしそこは慣れ親しんだ我が家ではなく、暗く狭い通路。上は暗くて何も見えないが、その通路は一本道で、遠くには出口らしき光が見えていた。さらに、落ちた時に頭でも打ったのか、頭が割れるように痛い。
                        「ん、あれ。何か、おかしいぞ」
                         身体に何か違和感を感じた。それは頭の痛みでもなく、男に掴まれていた腕の感触でもない。慌てて体を触ってみると俺は全裸だった。確かに部屋にいた時は服を身に纏っていたのに、今は布一枚すら羽織っていない。あの男に脱がされたのだろうか。額を押さえながら、首を左右に巡らせるが、暗くて周りはよく見えない。
                         とりあえず手当たり次第に手を伸ばしてみると、「ぐにゅ」という感触とともに「んほぉぅ」という野太い声がした。瞬間、腕に強い痛みを感じる。
                        「や、やめろ、おい、聞いてんのか。お前は誰なんだ、ここはどこなんだ」
                         俺はまた引きずられながら、尻を揺らして歩く全裸の男に訴えかけたが、男は無言で俺の腕を掴んで離さない。ひたすら光に向かって直進していると、やがて光の先が見えてきた。だが、出口だと思っていた光の中は大きな部屋で、全裸の屈強な男たちが、ひしめきあっていた。
                         シリ、シリシリシリ……そのオフシーズンのボディビルダーのような筋肉隆々とした男たちは中央で何やら取っ組合いをしている。喧嘩をしている風には見えない。口元はやや綻び、表情はどこか嬉しそうだ。
                         唖然としていると、男は掴んでいた俺の腕を持ち上げ、その男たちの中へ放り投げた。
                        「えっ、ちょ、あっ、あ、あ、うあああああああっ」
                         俺の身体は宙を舞い、鋼のように黒く逞しい肉体を持つ一人の男の胸へと飛び込んだ。反射的に肛門をすぼめ、おずおずと周りを見回すと、空腹に飢えた野獣の目をして、息を荒げた男たちに囲まれてしまっていた。
                        |12:50| わなびすとりーむ!じゅっかいめ 投稿作品集 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by わなびすとりーむ! - -
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